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レーダー探知機 その1 -速度超過違反取締りの実際-

アクセサリー
ループコイル式オービスのカメラ部分。

 皆さんは、ご自分のクルマにレーダー探知機を取り付けられているでしょうか?
 いろいろなご意見があるかと思いますが、私は必ず探知機を取り付けます。

 なにも速度取締りの網目をかいくぐって爆走したい、なんて理由ではなく、
・特に長距離運転時、たとえ誤報であっても (実際、誤報は多いです(笑))、不定期に何某かの警告が発せられることは 緊張感の維持に有効だ、
・うっかり測度超過をしてしまった現場をオービス(測度超過検知器)に撮影されてしまったという、万一のリスクを少しでも軽減したい、
と考えるからです。
 とくに後者は大きな痛手で、固定式の無人スピード検知器が発動するのは赤切符*1相当の違反であった場合だというのが通説、すなわち免停や裁判(基本は略式裁判、ただし希望すれば通常裁判も選択可能)、高額な罰金が伴う可能性が高いわけで、数万円で購入できる機器の装着でこうしたリスクを少しでも低減できるなら、これは充分にペイする投資だと私は考えます。

 ただし、探知機メーカー自身も採用する「レーダー探知機」という名称は、少々大雑把に過ぎるかもしれません。
 最大限の投資効果を得るためには、機器に対する正しい理解が欠かせません。そこで、近年主流の速度超過取り締まりの手法とそれらに対する事前予知策について、以下にまとめます。

 かつての速度超過取り締まり現場では、レーダーという手法でクルマの速度を算出していました。これは、クルマに特定波長の電磁波を照射、その電磁波が移動する物体 (クルマ)で反射する際にその波長が変化(ドップラー効果による短波長シフト)、送受信した電磁波の波長の変化量からクルマの速度を算出します。その結果、一定以上のスピード超過が認められた場合はお巡りさんの誘導に従い近くの広場 (いわゆる、サイン会場)に参集、スピード違反をした事実に異論はないとドライバーが認めれば違反者として違反切符にサインをする、というものでした。左記の有人取り締まりの他、道路上空に設置した円形のレーダー受発信機を利用して速度超過を検知、違反車両を写真撮影し後日警察署への出頭を求めるという無人取り締まり機 (写真下)も存在しますが、いずれにしろレーダーという手法で速度を算出する手段は特定波長の電磁波です。従って、この手の速度超過取締りの予知手段として、取り締まりに利用される波長域の電磁波を検出する装置をクルマに装着することはとても有効な対策で、その装置は一般に「レーダー探知機」と呼ばれてきました。

レーダー取締り装置の一例。円形部分がレーダー受発信機で、このタイプはレーダー探知機で検出可能です。

 統計データを参照したわけではありませんので定量的な表現は控えますが、かつて主流であった上記のレーダーによる速度超過取締り手法は今では鳴りを潜め、2000年頃からは代わりにループコイル式オービスが台頭、さらに最近ではレーザーを使用した可搬式の取締り手法も注目を浴びるようになってきました。いずれも、速度検知の手法としてレーダーを採用しているわけではないので、レーダー探知機をクルマに積んでおいてもこれら (ループコイル式オービスとレーザー取締り機)を発見することはできません。

 ループコイル式は、地中に埋めた3つのコイルを速度検知の手段としています。交流電流を印加したコイル上を金属 (この場合は、クルマ)が通過すると、コイル上に金属が乗った瞬間だけコイルのインダクタンスが変化します。このため、一定距離 (Lとします)を離した3つのコイル上をクルマが順に通過すれば、3つのコイルのインダクタンスの変化が順に観測されることになります。1つ目と2つ目のコイルのインダクタンス変動タイミングの時間差をΔt1、2つ目と3つ目のそれをΔt2とすれば、1つ目と2つ目、および2つ目と3つ目のコイル間の移動速度v1、およびv2は、それぞれv1 = L/Δt1、v2 = L/Δt2で与えられます。つまり車が3つのコイルの上を通過することで2回速度が計測でき、いずれもが一定の速度以上であれば、その先のカメラがクルマ、ナンバープレート、運転者の姿を記録、後日警察署への出頭を求めらます。お分かりの通り、この手法では はっきりと観測できる信号はなんら発していないめ、どんな信号検出器をもってしても検出することはできません。そこで、この手法の予知策としては、GPS受信機で自車の位置を測位し、あらかじめループコイル式オービスの設置場所を登録しておいたデータベースとの位置の比較を実施、自車がループコイル式オービスに接近した場合に警報を鳴らすという方法が採られます。原理に則り「GPS探知機」と正しく呼ばれることもありますが、「レーダー探知機」として一括りで呼ばれてしまうことのほうが多いように思います。
(オービスは新設されることも撤去されることもあり得ますので、設置場所を記録したデータベースの定期更新は、その効果を最大限に享受するための必須要件となります)

 最近出現し始めたというレーザー式の速度検出器について、現時点で詳しい情報が開示されていないため、私は詳細を知りません。しかし、レーザーとレーダーは名前が似ているけれども全くの別物なので*2、レーダー探知機は役に立ちません。また、可搬式、つまり移動式が多いそうですが、固定されていないのであればその位置をあらかじめデータベースに記録しておくことは不可能で、GPS探知機も役に立ちません。検出のためには、レーザー光を検出する「レーザー探知機」が必要になります。
(私にはレーザー物理学を専攻していた過去がありますが、直進性の高いレーザー光を小さなセンサーで本当に検出できるのか、非常にギモンです。レーザーポインターの光を、クルマに積んだコンタクトレンズよりも小さいセンサーでちゃんと捕らえることができますか?という質問に、自信をもってハイと答えることができないのです。どなたかお詳しい方がいらっしゃれば、どうぞご教授ください)

 長々と書いてしまいましたが・・・・
 言いたかったことは、
・「レーダー」探知機と一括りに呼ばれがちな機器ですが、今どきは最低でも「レーダー+GPS」探知機であること、最新のものは「レーダー+GPS+レーザー」探知機であること、
・(そんな人はいない?かと思いますが(苦笑))某オークションやフリマサイトで激安の、20年ほど前の、ホントの意味での「レーダー」探知機を買ってクルマに装着してもほとんど意味がないこと、
・新たな速度超過検出手法が出回ればそれに対応した機器に買い替えることが非常に重要なこと、
です。

 F10に乗り換えてから、都合3台 4台 (2021.05.修正)の「いわゆる」レーダー探知機を変遷してきましたが、それについては別の機会に譲ります・・・。

今回は、ここまで。
次の機会にお会いしましょう!

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*1 青切符、赤切符
 交通違反の現場で、警察官から渡される書面の一種。その名の通り、それぞれ薄青、薄赤色の薄っぺらい紙きれ1枚で、正式名称はそれぞれ「交通反則告知書(青切符)」、「告知票・免許証保管証」です。
 青切符は比較的軽微(違反点数6点未満)な違反に対して交付される書面で、行政上の責任は違反に対応した点数を引かれることで、違反を認めたうえで点数に応じた反則金を納付すれば刑事上の責任は問われません。
 対して赤切符は比較的重い違反(違反点数6点以上)に対して交付される書面で、行政上の責任は違反に対応した点数を引かれること、および免許の停止あるいは免許の取り消しで、裁判ののち罰金刑に処せられる (≒刑事上の責任を負う)ことになります。

*2 レーダー、レーザー
 いずれも原語の省略形で、それぞれのスペルはRADAR(レーダー)、LASER(レーザー)。
 RADARの正式名称はRadio Detecting and Rangingで、邦訳は電波探知測距。つまり、電波(電磁波)を用いて距離を測る手法を意味します。現在の速度超過取り締まりの現場では、測距のために10.525GHzの周波数(波長に換算すると28.48㎜)の電磁波が用いられています。
 LASERの正式名称はLight Amplification by Stimulated Emission of Radiationで、邦訳は誘導放出による光増幅放射。原理に関する詳細は割愛しますが、波長と位相の揃った電磁波を高い指向性で発生させられることが特徴です。
 上記でお分かりの通り、RADARは電磁波を用いて距離を測定する手法の名称、LASERは電磁波のうちの一形態を示しているわけで、本来は同列に並べて論じられる種類のものではありませんね。日本語には、こうした誤用が結構あるように思います (外来語に対するこのおおらかさも、日本文化の一つなのかもしれません)。

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