Kindle書籍刊行のお知らせ


ドイツ車のDIYメンテナンスについて、書籍にまとめました。本ブログで紹介している具体的なメンテナンス方法に留まらず、ドイツ車の思想、整備のポイントをまとめ、メンテナンスに必要な工具類の紹介、部品調達の実例紹介、メンテナンス対象の油脂類や部品の劣化メカニズムまでを紹介しています。

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Vベルトとテンショナーの交換

修理・点検・メンテナンス

 私のBMW F10は電動パワステ、電動ウォーターポンプ、電動ファン仕様ですので、クランクプーリーからの出力をVベルトで伝達するのはオルタネーター、エアコンコンプレッサーの2つだけです。
 電動化が進む以前の車は上記の2つに加え、パワステポンプ、ウォーターポンプ、ファンまでをVベルトを介してエンジンの出力で賄っていたわけですので、そりゃ燃費は・・・(泣)、ということになりますね。

 Vベルトは要注意の消耗品であり、エンジンルームの熱や漏れたオイル等で劣化します。もしこれが切れてしまえばオルタネーターを回せなくなり、つまり発電されなくなり、バッテリーに蓄えられた電力を消費しきったのちにエンジンは止まります。どこのクルマ屋にでも常備されているパーツでもありませんから、この事態は避けたい。といっても格別高価なパーツというわけではなく、また交換も容易ですので、定期的に交換すればよいでしょう。

 とはいえ・・・・。
 走行80,000kmを過ぎたあたりにそろそろ交換でも、と思いVベルトとテンショナーを入手、一旦はVベルトを外してはみたものの劣化の兆候はみられず、元に戻した経緯があります (パーツを入手する前に、状態をチェックしろよな・・・。まあ、腐るものではないのでいいんだけど)。
 走行120,000kmを超えた今も特段劣化した感じはしないのですが、もう換えちゃえ、で交換してしまいました。

 余談ですが、走行100,000㎞を超えたあたりでエンジンマウントとミッションマウントを交換したのですが、古いマウント類に目視では著しい劣化はみられませんでした。交換しても、格別に振動が減ったという感動もなし。
 昔の欧州車はこうした消耗品を積極的に劣化させる、つまり衝撃類を消耗品類に吸収させることで耐久部品の耐久性を保つ思想でしたので、100,000㎞も走ったエンジンマウントなぞもうヘッタヘタ、交換すれば見違えるほど振動がなくなったものですが、環境配慮に厳しい昨今、あまりゴミを排出せぬよう消耗品をも長持ちさせる設計思想に変わってしまったのでしょうか?とすると、時間と共にクルマ全体がヤレてしまうようになっちゃってるの??

 話を戻しましょう。
 あんまりアッサリと交換できてしまったのでほとんど写真がありませんが、必要な工具はT〇のトルクスとE〇の・・・だけです。ただし、テンショナーのバネはかなり固い(大人の男がうんしょっと、両手でそれなりの力をかけねばならぬレベル)ので、テンショナー係と掛け声&ベルト交換係の2名で行った方がよいように思います。
 BMWのサービスマニュアルの位置づけであるTIS (Technical Information System)によれば、事前に電動ファンを外すよう指示がありますが、日本人の繊細な手であれば外さぬとも交換できてしまいました。

 写真のテンショナーにみえるトルクスの穴に、T55のビットを差し込みます。これを運転席側から助手席側の方向に向かって (右ハンドルの車両を想定しています)回転させれば、ベルトにかかるテンションは緩み、ベルトを外せます。

テンショナーを赤矢印の方向にひねると、ベルトテンションが緩みます。

 ベルトを外したらテンショナーにかけたテンションを徐々に開放しながら止まるまで戻し、上部写真のテンショナー回転軸部にあるE14のボルトを外してテンショナーを新品に交換します。TISはこのボルトの再利用は禁じており、ボルトも一緒に新品に交換しましょう (私の購入したINA社製のテンショナーには、ボルトも付属していました。付属していないかと思い正規品の(高価な)ボルトも別に購入したのでしたが、これはお蔵入りです(´;ω;`) よくあること・・・)。

 ボルトは20N・mのトルクで着座させてから、90°の角度締めで留めます。闇雲に、バカ力で締め込んではいけません。アルミボルトの頭はカンタンにネジ切れてしまいますので・・・・(最近はちょっと利口になりましたが、昔はしょっちゅうネジの頭を飛ばしたものです・・)。

 新品のテンショナーはテンションを緩めた状態の位置でピン止めされていますので、取付後はテンショナーの張力を調整することなくそのまま新品のベルトを取り廻すことができます (私は、コンチネンタル社製のVベルトを購入しました)。

 ベルトを取り廻したらテンショナー係に一声かけ、ちょっとだけテンションを緩めてもらってピンを抜きます。それからゆっくりと運転席側から助手席側にレンチを戻してもらえば、テンショナーのバネの力でベルトに適切なテンションがかかり、作業は無事終了です。理屈がわかっていれば、この間10分程度の軽作業です。

 交換後のテンショナーは、こちら。
 (ベルトは、写真に撮らずに捨ててしまいました。溝もシッカリしておりまだまだ使えそうでしたが、見えない部分が劣化していたと考えることにしました(笑))

 これだけの太い線でコイルが巻いてあるので、バネが劣化してベルトを保持するテンションが低下するとは考えにくいです。しかし、先端についたアイドラープーリー (黒い部品)の軸やベアリングが劣化することは十二分に考えられますので、これはやはり定期に交換すべきパーツだと私は思います。

 気の抜けるようなカンタンな作業、また部品がすごく劣化していて交換によって体感できる効果があったわけではないので、作業による充実感というのは全くありませんでした。
 でもしかし、足を掬われてしまうようなトラブルのタネを一つ除去できたということで、ヨシとしましょう。

今回は、ここまで。
次の機会にお会いしましょう!

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コメント

  1. フルヤヒデハル より:

    初めまして。質問お願いいたします!我が愛車BMW F10 前期型528i 3000ccなのですがパーツリストを見る限りではvベルトテンショナーは現車でもリストと同じ位置にあるのですがリストにあるテンションローラーの位置に現車にはないのですが投稿者様のF10はいかがでしたか?又
    その場合のvベルトのサイズは8pk1786でしたか?よろしくお願いいたします。

    • Kei より:

      ご質問、ありがとうございます!

      まず、Vベルトや関連パーツのレイアウトですが、私の場合はテンションローラーを含め、パーツリストに記載された通りでした。

      パーツリストは私はReal OEMというサイトを利用していますが、正しくご自身のクルマを指定されていますか?一概に528iといっても、仕様や仕向地によってかなりのバラエティーがあるようですよ。リストから車種を選定するのではなく、シリアルナンバー(VINの最後の7文字を入力して車種選定することをおすすめします(この辺りの詳細は、私の著書に記載しています)。

      Vベルトのサイズが8pk1786だったか?という質問について、私はパーツ番号で部品を特定しています。ちなみに、私のクルマの場合、Vベルトのパーツ番号は11287628658です。Real OEMでは補足として8pk1786という文字が記載されていますが、これが何を意味するか私にはわかりません。私は、パーツはすべてパーツ番号で指定して購入しています。

      • フルヤヒデハル より:

        返信ありがとうございます。もう一度入念に検索してみます。
        ホームページ大変参考になります。今まではe34でしたのでddさまのホームページを参考にしてたのですがF10はなかなかなくてたどり着けましたこれからも参考にさせて下さい。

  2. マッサン より:

    こんにちは、はじめまして。
    同じ車両に乗られている方が少なく、整備の際大変参考になります。ありがとうございます。

    今度テンショナープーリー交換を自身でやってみたいと思っておりまして、ブログ読ませて頂いたのですが、「ボルトは20N・mのトルクで着座させてから、90°の角度締めで留めます。」と書かれていますが、これは、単純に20N・mで締めた後、更にそこから90°締めれば良いという事ですか?

    • Kei より:

      コメント、ありがとうございます!

      はい、トルクレンチで規定トルクを締めるだけだと、ネジの座面の状態によっては実際の締め付けトルクが狙い値とはズレてしまうことがあるようです。
      なので、弱めのトルク(この場合は20N・m)で仮締めしてから、指定角度(この場合、90°)で本締めするという方法が指定されているネジもあるのです。
      これは、角度締めと呼ばれる締結方法だそうです。

      書かれている通りの方法で間違いありませんので、ぜひDIY整備をお楽しみください!

  3. マッサン より:

    お返事ありがとうございます。

    F10のPDFマニュアルを入手する事はできたのですが、規定トルクを閲覧する事が不可能でした。
    スマホだからなのでしょうか?

    以前より、自身でバイクや車等のDIY修理が好きで、マニュアルを参照しながら行ってきましたが、マニュアルが見れても、規定トルクが解らないのであれば、不安です。

    ネット等で調べて解る範囲は自分でやりたいと思ってましたので、このようにブログに掲載して頂いてますと、凄く参考になります。

    ありがとうございます。

    • Kei より:

      はい、トルク管理は重要です。
      BMWのテクニカルマニュアルはTIS (Technical Information System)という名称ですので、一度ネットで調べられてはいかがでしょうか。
      規定トルクも記載されているはずです。
      可能な限り、締め付けトルク等の情報は共有しますので、DIYで長く、リーズナブルにF10を楽しみましょう!

  4. マッサン より:

    情報共有凄く助かります。お解りになる範囲でご教授頂けましたら、幸いです。今後とも宜しくお願いします。BMW TIS調べてみました。
    車種別にマニュアルが掲載されてて、参考になりそうなのですが、規定トルク(tightening torque 34 21 6AZ)等と記載されてました。パソコンだとクリックして、見れるのでしょうか?

    • Kei より:

      はい、PC環境の場合、クリックすれば別ページに飛び、きちんとトルク表示されますよ。
      ちなみに、テンショナーのボルトは”25Nm, 90°”と記載がありますが、これは25Nmで締めたのち、そこから90°ボルトを回転させろ、ということです。
      角度締め、と呼ばれるトルク管理方法です。

      DIY整備をエンジョイしてください!

  5. マッサン より:

    なるほど、pcだと見れるんですね。
    ありがとうございます。

    どうすれば見れるのか、、。
    スマホでpdfを開いては何度も連打してました(笑)

    角度締めでのトルク管理方法参考に致します。

    ありがとうございます(^-^)

  6. マッサン より:

    こんにちは。
    F10のエンジン冷却水なんですけど、1400km走行で約400cc消費するんですが、正常だと思います?

    • Kei より:

      1400㎞で400㏄も、というと、かなり多いですね。
      エンジンオイルと異なり、クーラントが「消費」されることはありませんから、どこかで漏れてしまっているのでしょう。
      クーラントが漏れると、漏れた箇所に白っぽい跡が残りますから、まずはそれを探してみてください。
      クーラントの経路のほか、ラジエター本体から漏れてしまっているかもしれません。
      オーバーヒートにつながりますので、自分で発見するのが難しければ一旦ディーラー等に相談し、漏れ箇所を発見してもらってから、そのまま修理してもらうか、自分で修理するかを決めてもよいかもしれません。

      • マッサン より:

        やっぱり多いですよね。
        F10なんですけど、去年の10月に中古で購入して、納車時(愛知~大阪へ)高速道路走行中に冷却水の警告灯が点灯、とりあえず大阪の自宅まで何とか乗って帰って確認しましたら、min以下だったので、冷却水を補充しました。確かその際、4リットル程入った記憶があります。販売店に連絡しまして、取りにきてもらい、ディーラーで加圧テストもしたらしく、結局原因が解らないとの事で、ディーラー曰く、ラジエーターキャップ(エキスパンションタンクというのでしょうか)の経年劣化という事で、ラジエーターキャップを新品に交換してもらいました。それで、気持ち少しマシになったような気はしたのですが、時々確認しますと、質問させて頂いた消費量、消費してました。一度自分でもディーラーに持っていって確認してもらおうと思います。それから、どうするか判断したいと思いました。ご意見ありがとうございました。

  7. マッサン より:

    こんにちは。
    立て続けにすみません。

    オススメ頂いたBMW TISですが、PC環境を用いてクリックしても、他ページに飛ばず閲覧不可でした。

    何か開く方法があるのでしょうか?

    • Kei より:

      PC環境がわからないので、なんともいえません。
      お力に慣れず、スミマセン。

      • マッサン より:

        PCに詳しくないので、詳細な説明ができないのですが、ノートパソコンでやってみました。ソフトウェア等の違いで開けなかったりするのでしょうか?有料のTISと無料のTISがあるのですが、有料の方は会員制で登録しないと、閲覧できないようです。後に有料になったのでしょうか?無料の方はマニュアルそのものは閲覧できましたが、34 21 6AZ等と表記されてる部分をクリックしてもページが切り替わりませんでした。

        • Kei より:

          私が使用しているのは無料のものですが、会員登録は必要だったと記憶しています。
          いずれにしろ、マッサンさんが現在参照されているサイトでは、リンク先に飛ばないのかもしれませんね。
          どんなサイトを参照されているのかわかりませんが、私の利用しているものも充分怪しそうなものです (積極的にお勧めできるようなものではありません)。
          しょっちゅうDIY整備をされるのでないなら、必要な時にディーラーに問い合わせるのでもよいかもしれませんね。煙たがられるとは思いますが、トルクくらいは教えてくれるかもしれません。

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