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私の好きな温泉・興味のない温泉

温泉
2019.12 湯けむりの別府 鉄輪温泉を望む

 私は普段からお風呂大好き!なタイプではなく、面倒だからシャワーで済まそう、ということの方が圧倒的に多いです。

 決して風呂好きではない私ですが、旅先として選ぶ場所の多くが温泉場です。なぜか? 温泉場の鄙びた雰囲気、遠い昔から威容を誇り今もオーラをまき散らす古い宿が大好きなのです!!家の風呂はあまり好きではなくても、温泉場の味のある浴槽で、におい立つ湯につかることは大好きなのです!!

 上記でなんとなくお察しの方もいらっしゃるかもしれませんが・・・、近代的な鉄筋コンクリートのビルが立ち並ぶ大旅館を擁した温泉場は完全に私の興味の対象外、出向くことはまずありません。また、(余程の特徴を標榜している場合は別として) いわゆる旅館料理にも興味がなく、よさそうな酒場のある温泉場なら酒場に繰り出して酒を呑むか、酒場の存在など期待できないもっと鄙びた温泉場なら食材を買って宿の炊事場で調理するか、宿に炊事場がないのであれば地元の店で地元の肴を買って宿で呑むか、を基本としています。

2019.06高友旅館 (東鳴子温泉)。 強烈な油臭が入る者を虜にする、高友旅館の名湯 黒湯。

 かつての日本に、湯治という風習があったことをご存知でしょうか?
 湯治は、医学が発展する以前 、江戸時代末期頃まででしょうか 、においては治療として、医学が発展し始めた明治以降は娯楽の一環として、布団、食料、調理器具等の家財道具を持ち込み、長期間を温泉場で過ごすという風習です。冬は深い雪に閉ざされる東北地方などでは、農繁期を終えた農家、あるいは百姓の方々*1が各地に点在する湯治場に大挙して集まり、それはそれはたいへんな賑わいだったようです。
 私は30代までを中部、関東、関西、北陸地方を重たる居住、また行動の場としておりましたが、長野県や群馬県でかつての湯治場の面影 (閉鎖された湯治棟や炊事場)を垣間見る機会はごくたまにあったものの、かつて日本にあったという湯治の風習は今や消滅してしまったものだとと思っていました。

 しかし、私の居住、行動範囲が九州や東北地方にまで拡がるにつれ、これら地域、特に東北地方においては、かつてほどの繁栄はないにしろ、湯治という風習、あるいは文化が、消えつつある中にもまだかすかに残っていることを知ることになりました。
 ふすま (もちろん、鍵などついていない)を開けたらすぐ廊下、という宿の造り、おばあちゃんたちがにぎにぎしく井戸端会議をしている共同炊事場、所によっては男女混浴で、老若男女問わず誰もが人目を気にすることなく湯を楽しむ情景。
 へーっ!、まだこんな日本が残ってたんだ!!
 そこからは湯治文化の虜となり、できるだけ湯治の雰囲気を色濃く残す温泉場を探し、各所を訪ね廻りました。

2018.01 雪の大沢温泉 (花巻温泉郷)。ふすまを開ければ、そこはもう共用廊下。
2020.09 酸ヶ湯温泉。混浴文化を次の世代に引き継ぐための努力。この看板は、津軽の生んだ芸術家、棟方志功の手になるものです。男は見せるな、女は見るな、ということでしょうか。あれ?、見るのは女の人?男の人でなくて??。ええ、そうかもしれません。私は、男湯を覗いてはしゃいでいるおばさんグループを見かけたことがあります (≧▽≦)

 しかしながら、このよき湯治文化も、残念ながら次の世代には引き継がれないかもしれません。やはり利用者が減ってしまったからでしょうか、あるいは耐震性の関係からでしょうか、大広間や雑魚寝部屋のあった棟は取り壊され、小綺麗な個室に変わりつつある姿をよく目にします。
 私にはとても愛しく思えるこの文化、一人惜しんだところで、時代の変化の波にのまれ消えゆく運命を変えられるものでもありません。ならば、去り行く湯治文化に触れることのできる最後の世代として、たっぷりと楽しんでやろうではありませんか!そのために、快適な長距離移動を実現する乗り物を日々せっせとイジり、万全な状態を保っているわけですから!(時々、壊してしまいますが(笑))

2017.09 大部屋から個室に改装すべく取り壊された、後生掛温泉 旧鈴蘭寮。
2017.09 後生掛温泉。大部屋から個室に改装すべく取り壊された、旧鈴蘭寮。2018年、全室個室の鈴蘭寮として再オープン。

 お分かりでしょうか?上記の通り、温泉に対する私の興味の範囲はごく狭い上に非常に偏っています。「温泉といえば有馬だぜ!」という諸兄方とはなかなか好みが合わないかもしれません。
 でも、趣味嗜好は十人十色、異なる方には笑っていただければよし、同じくする同志とは情報交換ができればなおよし。皆さん、楽しみましょう! 
 

私はこんな本を愛読し、旅の参考にしています。ただし、本の通りに辿るということはしていません(笑)

① 日本ボロ宿紀行 (上明戸聡, 鉄人文庫, 2017年)


② 日本ボロ宿紀行 2 (上明戸聡, 鉄人文庫, 2018年)


③ 侘寂(わびさび)温泉 東日本版 (魚谷祐介, 辰巳出版, 2018年)


④ 侘寂(わびさび)温泉 西日本版 (魚谷祐介, 辰巳出版, 2018年)


しみじみシビレる!名湯50選 ひなびた温泉パラダイス (岩本薫, 山と渓谷社, 2017年)

秘湯・古湯・足元湧出の湯 100 (旅の手帳MOOK) (交通新聞社, 2019年)

⑦ ぶくぶく自噴泉めぐり 奇跡の湯 改訂版 (篠遠泉、長岡努、永瀬美佳, 山と渓谷社, 2017年)

⑧ 現代湯治全国泉質別温泉ガイド (淡交ムック) (淡交社, 2019年)


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*1 農家、あるいは百姓の方々
 え?農家と百姓は同じじゃないの?と感じた方もいらっしゃるかもしれません。よくいわれるのは、農家には100の仕事があるから百姓だ、ということ。私も、農家 = 百姓と思っていました。
 しかし、歴史学者 網野善彦はいくつかの事実を根拠に、土地を媒介しない経済活動 (漁業、林業、鉱業、商業など)を生業とする非農業民も含めて「百姓」と称する、と主張します。江戸時代のある時期の全人口の76%が百姓にカテゴライズされていたが、百姓 = 農民と解釈すれば、その当時の社会が立ちゆかない (農業以外の産業が成立しない)と。
 網野さんの独特の主張は時折、「ロマンチシズムに過ぎる」などと揶揄されますが、彼の先入観を覆す様々な歴史感に触れると、なんというか「わくわく」します。私は歴史学者でもないし、今後そうなる予定もありません。だから、いいんです!わくわくしながら歴史を楽しみたいのです。

 以下が、私が網野史学にどっぷりハマるに至った、最初の一冊です。自信をもって、おススメします。

⑦ 日本の歴史を読み直す (網野善彦, 筑摩書房, 1991年)


 以下、網野善彦に関する書籍です。上記⑦で網野ワールドにどっぷりハマってしまったら、ぜひご参照ください。

⑧ 追悼記録 網野善彦 (赤坂憲雄編, 洋泉社, 2006年)


⑨ 日本売春史 -遊行女婦からソープランドまで- (小谷野敦, 新潮社, 2007年)
 →非常に男前の文章、論理構成で記載された本です。作文の手本にもなり得る本だと思います。


今回は、ここまで。
次の機会にお会いしましょう!

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