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青森県五所川原市金木町(かなぎまち) -吉幾三の故郷で、地獄絵に出会う-

名所旧跡・街
2020.09. 雲祥寺の地獄絵。生前の行いを映す浄玻璃の鏡の前に立たされる亡者。放火してしまってますね・・・。

 仕事の場合は別ですが(笑)、プライベートで旅行に出かける際は、出かける場所、日、時間など、ほとんどをその場その場の出たとこ勝負で決めてしまいます。当日のプランを決めるのは、よくて前日、多くはその日の朝になります。予めスケジュールを決めてしまうと、訪れたスポットが思いのほか興味深かった、あるいはその逆の場合に柔軟な対応を採りにくくなるでしょうし、スケジュール外の楽しそうなスポット (私の場合、骨董屋や古道具屋的なリサイクルショップなどがそれにあたります)を発見した場合にそこに寄るのを躊躇してしまう、そんな弊害がありそうですので、その時の気分に従う出たとこ勝負を基本にするようになりました。海外を旅する場合でも、それは変わりません。

 2020年9月のある日、私は北東北の街はずれにおりました。その晩は私の一番のお気に入りの温泉場の一つ、酸ヶ湯温泉に宿泊しようと目論みいくつかの宿泊予約サイトで空き部屋を検索しましたが、まったく空きがありません。「当日予約でも、湯治プラン(素泊まり)なら空きがなかったことはないんだけどな~」と、訝しみながらも宿に電話すると、「連休のせいか、部屋の空きが全くないんです~。Go To トラベルも始まりましたし~」の返答。では、と、八甲田山三秘湯の他の2つ、谷内温泉、蔦温泉の様子を確認するも、状況は同じ。かねてから興味のあった浅虫温泉までも・・・。

 はて、困ったべ・・・、青森市内には何度も泊まってて新鮮味に欠けるしな~。
 宿の探索範囲をもう少し拡げると、五所川原で一軒だけ空きがあることがわかりました。五所川原ねぇ⤵ (あんまり気乗りしない)・・・、んんんっ、ちょっと待てよ?? 五所川原といえば!、

♪ハァ~ テレビもね ラジオもね クルマもそれほどはすぃってね~♪ (俺ら東京さ行ぐだ)
♪逢いたくて~ 恋しくて~ 泣きたくぅ~なる夜ぅ~♪ (雪國)

数々の名曲を世に送り出した、敬愛する吉幾三先生の出身地ではありませんか!!
また、青森市内から遠く望むことがあるだけだった、美しい岩木山のふもとの町ではありませんか!!!
はい!!、決まり!!

そして、こちらが五所川原駅。予想通りの佇まいで、安心しました (^O^) 。

 写真にはおさめませんでしたが、駅前通りや路地には高度成長期のころには賑やかであったであろうデパートや市場、呑み屋の果てが、今はひっそりと佇んでいました。私の大好きな風景です。
 なお、ストーブ列車で有名なのは津軽鉄道の五所川原駅、こちらのJRの駅とは違います。
 夜は居酒屋で、と思っていましたが、入ってみたいなという店が見つからず (ざっと見たところ、選択肢は2つくらいしかありませんでしたが)、地のスーパーで地のものらしき肴を買い部屋で呑み、その晩は寝ました。
(旅館料理が好きではないため、私はほとんどの場合は素泊まりで予約し外の酒場に繰り出すか、地の肴を買って部屋で呑むことが多いです)

 翌朝、五所川原を発とうとクルマに乗り込みましたが、道中の道路標識で見た「金木」という文字が頭から離れません。脳裏の奥底に古い記憶が残っているのだと思いますが、さてなんだったけかな・・・。しばらく考えれば思い出す、なんてことは最近ではほとんどミラクルの世界、さっとスマホで調べると、金木町は太宰治の出身地で、生家である斜陽館やゆかりの品々が残された街とのこと。ゆかりの品の中には、彼の幼少時にお手伝いのタケに見せられたという「地獄絵」があり、所蔵する雲祥寺で拝観させてていただけるとのこと。地獄絵か~、これは絶対に見ておきたいな~と、金木町に向かうことにしました。

さて、雲祥寺。

 本堂左手の壁に、全7幅からなる立派な地獄絵の掛け軸が掛けられています。地獄絵とは正式には「十王曼荼羅」の名称であり、十王経の教えを絵に画し、子供を含む一般衆人に説く際に用いられた絵だそうです。地獄絵には、人が亡くなってから極楽浄土に行けるかどうかの最終裁判がなされる49日までの間のプロセス (7日毎に7回行われる、俗にいう49 (7×7)日が描かれているそうです。私が浅学なため、こちらに貼付した略説と解釈が異なる部分がありますが、ご勘弁ください。現在書籍で地獄絵等について勉強中で、正しく理解できた段階で更新する考えでいます。
 こちらの地獄絵には、この49日間の様子に加え、人間が死した直後(新死)から土に還る(骨散)までのプロセスが併記の形で描かれています (いわゆる九相図)が、49日間という短い期間で死体が土に還るとは考え難く、7幅の掛け軸に展開された2種の仏教画 (十王曼荼羅と九相図)が双方の時間軸を無視して描かれたものなのかそうでないのか、こちらについても正しく理解できた段階で更新する考えでいます。江戸時代の作であろうとの推察はなされていますが制作年代、作者共に不詳、とはいえ今なおオーラを放つ荘厳さ、彩色も鮮やかな状態が保たれています。 

 上に、雲祥寺蔵地獄絵図の部分を3点切り抜きました。うまく写真におさめることができなかったので、全体像は掲載しません。雲祥寺にお出かけいただき実物をご覧いただくか、文末にご紹介した書籍をご参照ください。

左: 脱衣婆
亡者から衣服を剥ぎ取る老婆。衣服のみならず、生前の名誉・財産の諸々もここで剥ぎ取られます。脱衣婆は剥ぎ取った衣類等を木の枝にかけますが、その枝のしなり具合が生前の罪の重さを示すそうです。いっそ折れるレベルまでいってしまえば、笑って許してもらえる??
中: 浄玻璃の鏡
亡者の生前の行いを全て映し出す鏡。あっちゃ~、この亡者は生前放火をしてしまっていますね~。このあとに起こるであろうこと、あな恐ろしや。
右: 九相図の出発点、新死
九相図は、死の直後の状態である新死から、骨がばらばらになって散らばり果てるまでの骨散までのプロセスを9パートに分け、画に描いた仏教画です。新死以外は非常にグロテスクですので、ここには掲載しません。ぜひ、実物を。地獄絵同様、雲祥寺にしかないものではなく、どの都道府県にも立派な九相図が数点はあるかと思います。
地獄絵の意味するところは明快で、誰しも親から一度ならずと言われ続けてきたことでしょう。「悪いことすると地獄に落ちるよ!」、です。
(実際は、生前に悪いことをしてない亡者も一度は地獄に落ちる定めのようです (死後49日の間)・・・。)
では、九相図の意味するところは何でしょう?九相図のモチーフは、多くの場合が美女です。九相図では死した美女が醜く変わり果てるまでをグロテスクに描きますが、これは観る者に「どんな美女も死んでしまえば醜く変わり果てるもの。だから、美女にうつつを抜かすことなく真面目に働きなさい」と教えるものだそうです。なんだかな、夢も希望もありゃしない。私はイヤです、ゼッタイにお断り!!!
♪おら、そんなどごはいやだぁ~ そんなどごはいやだぁ~ 竜宮へ行ぐだぁ~⤴
 竜宮へ行っだならば 美女さ~あづめて~ たのしっぐ酒っこ呑むだぁ⤴♪
おっと、心の声が・・・。失礼しました。

 この寺を訪れるのは初めてですが、絵は初めて観るものではなく、過去に鑑賞した記憶が脳裏にかすかに残っています。恐らく、2016年夏に開催された「大妖怪展」で観たのだと思います。この展覧会は非常に秀逸、かつ印象深く、私が妖怪絵、地獄絵、幽霊絵の美しさに魅せられる最初のきっかけになったものです。なお、大妖怪展はこの年に江戸東京博物館( 07.05~08.28)、およびあべのハルカス美術館 (09.10-11.06)の2会場で開催されましたが、私は両方とも観覧しました (^O^) 。この展覧会の様子は、別の機会にご紹介する予定でおります。この展覧会と同時開催で「伊藤晴雨 幽霊画展」も開催されましたが、これも、そののちの私に大きなインパクトを残しました。

 1時間ほどでしょうか、7幅の掛け軸をたっぷりと堪能し、雲祥寺を後にしました。

 その後、太宰治の生家である斜陽館を訪れました。斜陽館は金融業で財を成した彼の父が明治期に建てた和洋折衷・入母造りの豪奢な建物です。とても雰囲気のある建築物ですが、土間付近の天井が非常に高く、この豪雪の地 金木では冬はずいぶんと寒かっただろうな~などと、余計なことを考えていました (´∀`*) 。

 いくつかの偶然の重なりたまたま金木町を訪れることになったわけですが、とてもよいものを見せてもらいました。

 今回の鑑賞が地獄絵や九相図に対する興味を改める機会となり、以下の書籍を購入しました。

① 地獄絵 ART BOX (加須屋誠 著, 講談社,  2019年)
 この本には「地獄絵」をアートとして楽しみながら理解を深めていく仕掛けが施され、楽しく、わくわくしながら読み進めることができます。ポップで軽快な中にあっても地獄絵のコンセプトをしっかりと理解させる、新しいタイプの書籍です。聖衆来迎寺所蔵の六道絵をはじめとして、北野天満宮、長岳寺、各国立博物館蔵の地獄絵にも言及しています。地獄絵に関する書籍を一冊買うとすれば、これが一番のおすすめです。


② 地獄絵の世界
 上記①が比較的カジュアルな観点からアートとして地獄絵を扱うのに対し、こちらは仏教学の見地から考察した日本人独特の死後世界観を解説します。江戸期に描かれた熊野観心十界曼荼羅をベースにしていますが、この曼荼羅は聖衆来迎寺の六道絵等に比べ、ずいぶんとマイルドな印象を受けました。


③ 九相図を読む (山本聡美 著, 角川選書, 2015年)


 上記の書籍のよれば、、地獄絵のマスターピース (お宝)は滋賀の聖衆来迎寺にある国宝 六道絵だとのこと。早速観に行こうと情報を手繰ると、六道絵は常に展示されているものではなく、聖衆来迎寺でこのお宝を鑑賞できるのは8月に数日間実施されるの虫干しの期間中のみとのこと・・・。ほとんど一年待ちじゃん・・・・。熱いうちに鉄を打ちたいのに!!!
 ところがこの後、大津市歴史博物館 (滋賀県大津市)を訪ねた際、偶然にも運命の導きを受けることになるのです!

 書籍のリンクを貼っているうちに、・・・・
 こんな面白そうな書籍を見つけてしまい、ポチっとやってしまいました・・・
④ 闇の日本美術 (山本聡美, ちくま新書, 2018年)


今回は、ここまで。
次の機会にお会いしましょう!

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