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愛知県名古屋市中区大須 -昔は電気・電子の街、現在の姿は?-

名所旧跡・街

 大学進学までの期間は、岐阜市に住んでいました。
 中部圏外の人に「岐阜出身」と言えば、「雪国?」「山間?」などというリアクションが返ってくることが圧倒的です。確かにそういう地域も多いのですが、岐阜市は愛知県に隣接しており、岐阜駅から名古屋駅までは電車 (新快速)で20分強、また距離にして30㎞程ですので、クルマで出かけても大した時間はかかりません。したがって、子供の頃から、岐阜の街では済まない用事があるときはよく名古屋に出かけていました。特に、中学生の時分は無線や電子工作に熱中していたこともあり、当時は電気・電子の街として認知されていた大須にしょっちゅう出かけていました。
 それから数10年、テレビで大須商店街の特集を観たことをきっかけに急に大須に行きたくなり、クルマを飛ばすことにしました。

 結論を先に申し上げると、大須の街は変化した部分と昔から変化しない部分の落差が非常に激しく、懐かしい感覚と淋しい感覚が入り混じった街でした。

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大須の街で「変化した」部分

① 電気・電子の街としての面影がすっかり薄れてしまった
 中学生の時分、大須に行けばまず第一アメ横ビル、第二アメ横ビルに向かい、ビル内に所狭しとひしめく小商店で様々な電子パーツや工具、その他エレクトロニクスグッズを漁っていました。
 現在は昔からあった店がほんの一部残っていたものの、それら小商店の数は激減し、片隅の一角にひっそりと残るだけでした。第一アメ横ビルには空きスペースが目立ち、第二アメ横ビルの2F、当時は電子関係を扱う小商店がひしめいていたのですが、現在はファッションショップに様変わりし、ヤング (死語??)の溜まり場になっていました。

第一ビルの外観。今風に変わっています。
第一ビル内、昔からある店舗。まるで要塞ですね。
第一ビル内で目立つ空きスペース。あなさみし。
昔から変わらない第二ビルの外観。
昔からある電子パーツの小商店。ただし、数はめっきり減り、1Fの1/4弱を占めるのみ。昔は、こうした店が2フロアー分ありました。
昔は電子パーツ小商店がひしめいていましたが、今はヤング御用達のファッションショップに様変わり。

② 趣のあった万松寺がすっかり様変わり
 万松寺は、織田信長の父信秀が建てた織田家の菩提寺です。信秀の死に際して信長がふさわしくないいでたちで葬儀に参列したばかりか、抹香の入った器ごと投げつけたことから、信長はうつけ者だとの噂の端になったのもこの寺でした。
 写真は持っていないのでアーバンウォッチング!様のページをご参照いただきたいのですが、数多くの提灯がつるされ狐が睨む稲荷堂が印象的で、ここだけ空気が変わったかのような神秘的な場所でした。本堂へは半地下の通路で結ばれていた記憶がありますが、確か象の置物があり、これもこの寺の神秘を醸し出していました。
 今はこんなに様変わり、とても現代的な寺に成り代わりました。イメージとしては、大阪の一心寺のテイストに通ずるように思います (御朱印ランナーの聖地巡礼様のページに、同寺を特徴付ける阿吽像の写真が掲載されています)。一定時刻になると、巨大な白龍が水と光の中を踊るパフォーマンスがあるようです (私はまだ見たことがありません)。

様変わりした万松寺。
この象は、昔からいたと思います。
時間が来ると踊る(らしい)巨大な白龍。

③ 列をなしていた質屋群がなくなった?
 ここたからさんの味噌煮込みうどんが絶品であったことを忘れ、大須到着前に藤一番で名古屋ラーメンを食べてしまいました。藤一番のラーメンもうまかったですが、たからやさんの味噌煮込みうどんも食べたかった・・・(私はあまり胃が大きい方ではなく、ラーメンの後にうどんはちょっとムリです)。
 たからやさんに面した通りを本町通りといいますが、昔はこの通りには代々続いていそうな質屋が列をなしていた記憶があります。予備校に通っていたころ、バイクで事故を起こした友人へのカンパのためにダンヒルのライター (予備校生がなぜそんなものを持っているのか?ということはおいといて・・・)を質草に6000円借りましたっけ。結局取り戻せず、質流れさせてしまいましたが・・・。今はそうした古い質屋が全く見当たりませんでした。大須の質屋といえばコメ兵が著名ですが、合併してしまったのでしょうか・・・。

ここの味噌煮込みうどんは絶品なのですが、今回は食べられませんでした。なべの蓋を裏返しておわんの代わりにする、the 名古屋スタイルです (笑)

④ 老舗の鰻屋さんが老舗のみそかつ屋さんに変身??
 下の写真は、大須観音を抜けた大須観音商店街の入り口に位置する店舗です。今も少し面影を残していますが、写真左中の左側の店舗、昔は老舗の鰻屋さんでした。今は、名古屋で名を馳せる名古屋名物みそかつ矢場とんさんに変わっていました。ここはわらじサイズのわらじみそかつが、とてもおいしいですよ!

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大須の街で「昔から変化しない」部分

① 大須観音の佇まい、あたりに漂う線香の香り
 キャッチアイの画像に掲載した通りです!昔から、何にも変わっていません!!威風堂々!!!

② レトロな八百屋、魚屋さん 
 昔から、なんにも変わっていません!両店舗は、細い通りの向かい合わせに位置しています。多分、同じ系列の店舗なのでしょう。

③ 昔ながらの商店
 昔から衣類の店が多い商店街でした。スカジャン、コスプレ、帽子屋さん。様々な衣類が販売されています。ただし、各商店は完全にそれぞれの専門分野をお持ちで道を極めていらっしゃるようですので、道を同じくする方には心強いお店である一方、そうでない方には敷居が高いかもしれません。写真下のおもちゃ屋さんお看板をご覧ください。ご趣味の方には垂涎ものだと思います。

④ 点在する寺社群
 慶長15年、清州から名古屋に遷府しました。この時に寺社群も移転し、特に大須近辺には南寺町として多くの寺社が集められたそうです。その後の戦災による消失、都市計画に応じた移転により往時よりも数がかなり減ったとはいえ、それでもかなりの数の寺社が街に点在します。どれも、極めて味わい深い寺社ばかり。青空寺院と呼ばれるそうですが、中には宗教法人を解散してしまった寺社もあり、人の手の入る機会が減るからでしょうか、独特の雰囲気を醸し出しています。

ここ曹洞宗の陽秀院には、紙貼り地蔵が鎮座しています。地蔵横に設置された紙を取り、水に浸して地蔵様に貼り付けます。それからお願いごとをすれば何事もお聞きくださるというのが、天保の昔から言い伝えられているそうです。

⑤ 大須フィッシュ
 大須観音の参道入口に位置する熱帯魚屋です。昔からありましたが、ちょっと色が褪せてしまったような気が??写真右に「アイススケートリンク」の文字が見えるでしょう。実はここ、浅田真央選手のホームリンクなのです!

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そのほか

 こんな串カツ、味噌カツ、どての店が点在しています。クルマで来ているので食べられない (≒呑めない)のが残念・・・。串カツ、どては大阪にもあるのですが、名前は同じでもものはまるで違います。
 名古屋の串カツ、味噌カツ、どて、たま~に食べたくなるんですよね~。大学生だった私はこうした食べ物は全国どこにでもあるものだろうと考え、東京の下町で呑兵衛そうな方々に聞きまわりましたが、どなたも全くご存じない。というよりも、話すら通じない。これらは、スガキヤ、矢場とん、味噌煮込みに並ぶ、名古屋から門外不出のソウルフードだったのですね~。

串カツ、どても、代表的な名古屋のソウルフードです。
中部圏外では見たことがない、門外不出の名古屋ソウルフードであるスガキヤ。

 帰りがけ、酉の市のポスターを見つけました。

 酉の市は東京浅草 鷲 (おおとり)神社がとくに有名ですが、年末11月の酉の日に開催される熊手市です。来年の福を熊手でかっこもうというものです。関西には酉の市の風習はなく、年始の1月10日を中日とした前後を含む3日間に戎 (えびす)まつりがそれに代わるようです。ここでは、熊手ではなく箕 (み)が売られます。東西で、片方 (東)は熊手で掻っ込む、もう片方 (西)は箕で掬い取る、こんな違いがあるのですね。この違いが、東西におけるどんな文化の違いに由来しているのか、非常に興味のあるところです。
 名古屋は関東圏なのか関西圏なのか?、よく論争になる議題です。酉の市の一件を見ても、私は名古屋は関東圏に属するように思います。ただし、鰻の捌き、焼きは関東風が多いものの、関西風も少々混じります。これは完全に私見ですが、愛知は関東圏、三重は関西圏、岐阜は大垣より以西は関西圏、ほかは関東圏だと、私は考えています。

 大須観音を商店街と反対側に出たところで、こんなお店を見つけました。buychari (ばいちゃり)。中古自転車、パーツ屋さんですが、ピナリロ ドグマをはじめとした高級車が、ずらりと並んでいます。デュラエースを装着した自転車が多いといえば、この店で扱う自転車のクラスがお分かりいただけるでしょう。私は、CATEYEのフロント/リアのライトのセット (中古)を買いました。両方で1500円、最後にいい買い物ができました! (というか、今回の大須訪問で購入したのはこれだけでした・・・)

 ここで、本を一冊ご紹介します。
関東人と関西人 二つの歴史、二つの文化 (樋口清之, PHP研究所, 2015年)


 上記にも少し話題に出しましたが、関東と関西の文化の相違を「人」の側面から切り込んだ日本人論の本です。関東でも関西でもない中部で生まれ育ち、長じては関東と関西の両方に住んだ経緯のある私が漠然と感じていた「東と西の違い」を、それらの地における歴史、それぞれの地に住む人々の感性、日常感覚の違いを切り口として論理的に言語化されています。へッへ~!、そうかもね~、そういうことなのかもな~!とうなずく個所の多かった、非常に興味深い、かつ楽しい本でした。

今回は、ここまで。
次の機会にお会いしましょう!

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