Kindle書籍刊行のお知らせ


ドイツ車のDIYメンテナンスについて、書籍にまとめました。本ブログで紹介している具体的なメンテナンス方法に留まらず、ドイツ車の思想、整備のポイントをまとめ、メンテナンスに必要な工具類の紹介、部品調達の実例紹介、メンテナンス対象の油脂類や部品の劣化メカニズムまでを紹介しています。

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ATF交換の詳細 -ZF社製GA8HP45ZのATF交換-

修理・点検・メンテナンス
8 speed automatic transmission from ZF website. https://www.zf.com/products/en/cars/products_29289.html

 ATF (Automatic Transmission Fluid)は、エンジン動力をプロペラシャフトに伝達するほか、AT (Automatic Transmission)内部のバルブの駆動、歯車の潤滑を担う油脂(オイル)の一種です

 エンジンオイルを劣化させる最大の要因はオイルへのブローバイガス (ピストンとシリンダーの壁の間隙から漏れ出す気体)の混入で、このガスに含まれる未燃焼のガソリンがオイルを希釈し、著しい性能低下 (粘度の低下)を引き起こします。
 その一方で、ATはエンジンの排気経路から完全に独立しており、ATFにブローバイガス、つまりはガソリンが混入する余地はありません。このため、エンジンオイルに比べればATFの劣化スピードは遅く、典型的な日本車の場合は走行20,000㎞毎の交換が推奨されています
 でも、・・・・。例によって欧州車の推奨交換スパンは非常に長く、私のクルマのATFは”Life Time Transmission Fluid”、なんと!、クルマ生涯無交換を謳っています。確かに、オイルの一番の劣化要因であるガソリンにさらされる環境にはないとはいえ、絶えず歯車の剪断力や熱にさらされているわけで、無交換でいい、というのはいくらなんでも乱暴のような気がします

 私のクルマのATは、ドイツ ZF社製のGA8HP45Z。ちなみに、ZFというのはドイツ語のZahnradfabrikに由来するそうですが、その邦訳は「歯車会社」、そのまんまですね~(笑)。
 BMW社は確かに「ATFは無交換で問題ない」というものの、ある時雑誌、確か雑誌German Carsだったと記憶します、に掲載されたZF社の広告には「ATの機能保持のためには、走行60,000㎞毎にATFを交換しましょう」という記載がありました。もともと「無交換でいい、というのは乱暴だよな」と思っていた私ですので、ATメーカーの推奨に従い走行60,000km毎にATFを交換することに決めました

 では、どうやって交換するか?
 ZF社発行のマニュアルを確認すると、ATFの交換は特段難しい作業とは思えませんでした。しかし、永らく交換していなかったATFを交換すると、新油に含まれる洗浄剤がバルブボディーに詰まったスラッジを浮き上がらせ、バルブを詰まらせ不調に陥る、とか、とかくATF交換については恐ろし話も頻繁に耳にします。自分で交換してみて、万一手に負えなくなるのも困りますので、初回は専門家にお願いすることに決めました。

 まずディーラーに問い合わせたのですが、「交換の必要はありません」の返答。それでも食い下がってお願いすると概算金額を教えてくれましたが、ATFとATFオイルパンの交換で20万円に近い金額のご提示 ( ゚д゚) ・・・。いくら何でも、高いよね・・・。なんでも純正のATFが効果で、100mlいくら、という値付けでした。ここは、却下

 BMW専門のプロショップで「ATF交換承ります」という店もいくつかありますので、次いでこうしたショップに問い合わせました。すると、コンタクトしたどのショップもATFの交換のみを基本とし、またATFは純正品ではなくショップオリジナルのものに交換するとの内容。私はATFオイルパンも交換したかったし、ZF社のマニュアルには再三「純正ATFを使用すること」と書かれていたこともあり純正ATFで交換したかったのですが、いずれのショップも純正ATFの取り扱いはなく、持ち込みATFの交換にも対応しないとのこと。ここも、却下

 最後の手段として一般的な輸入車の整備工場を訪ねると、同社では入手できないが、純正のATFとATFオイルパンを持ち込んでくれるのであれば、交換作業は実施してもよいとの回答。よし、決まり!!
 さっそく、純正部品の入手に入ります。私は、①ATF、②ATFオイルパン、③コネクタースリーブの3品を交換してもらうつもりでいました。部品の購入ルートを調査すると、①はドイツから輸入できることが、②は国内の部品商が扱っていることがわかりました。③は海外中心にくまなく探すものの、その当時はスリーブ単体での入手先を見つけることはできませんでした。

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注記) コネクタースリーブ
ATの電子制御部とATFオイルパンを隔離するためのスリーブ(筒)です。BMWでもベンツでも、ここからATFが漏れて故障につながるケースが多いようです。
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 ZF社純正ATFのLife Guard8とコネクションスリーブの写真を、以下に示します。

 結局、ZF社の純正オイル Life Guard 8と同社ATFオイルパンのみを入手し、クルマを1日預け交換作業をお願いしました。
 交換後のインプレッションですが、ちょっとスムーズになったかな、という程度。でも、これで十分に満足でした。フィーリングの向上が感じられなかったにしろ、交換前にも気なるような不具合はもともとありませんでしたし、交換すべきフルードを適切なタイミングで交換できたという満足感が勝っていたからです。

2回目の交換は、DIYで実施することに決めました
 この時は①、②に加えて③までもが純正品で入手 (輸入)できることがわかっていましたし、ZF社のマニュアルを見る限り、走行60,000㎞以下毎に交換する場合、1点だけシッカリと留意すれば、そのほかにはATFの交換作業でATに深刻なダメージを与え得る工程はないと判断したからです
 その1点というのは、ATF量の管理です。ATFの体積は強い温度依存性がある (温度によって膨張する)ようで、ATF温度温度が規定範囲内にあるタイミングでその量の調整をせねばなりません。注意は必要ですが、ATFの温度を計測できるデバイスも持っていましたので、ここはクリアできると判断しました。
 2回目の交換は走行100,000㎞時、つまり1回目の交換から40,000㎞走行後に実施しました。ここでも、交換前後で特段のフィーリングの変化は体感できませんでしたが、やはり交換すべきフルードを適切なタイミングで交換できたことに十分満足しました
 ATF、ATFオイルパンの交換共に特段の問題なく実施することができました。一点だけ惜しむらくは、せっかく入手していたコネクタースリーブの交換を失念するという痛恨のミスをしてしまったことです。まあ、腐るものでもなし、これは次回の楽しみに取っておきましょう!
 当時はブログを開設する予定はなく、交換時の写真を一切残しませんでした。次回交換時 (そんなに遠い将来ではないと思います (^^♪ )には記録を残し、ATF交換のプロセスをご紹介します!

 2回のATF、ATFオイルパンの交換に要した費用を、以下に示します。2回目の費用が格段に下がったのは、交換工賃が不要になったばかりでなく、様々な失敗を経て買い物が上手になったからだと思います (^^♪ 。

.1回目 → 2017年10月、62,000㎞走行時。ショップで交換 (部品、ATFはすべて持ち込み)。
総額: 75,648 JPY
部品費用:50,916 JPY
(オイルパン 18,800JPY (日本で購入) + ATF 32,116JPY (ドイツから輸入))
工賃: 24,732 JPY

2回目 → 2020年3月、103,500km走行時。自分で交換。
総額: 28,741 JPY
部品費用: 28,741 JPY
(オイルパンとコネクタースリーブ 11,360JPY(シンガポールから輸入) + ATF 17,381JPY (ラトビアから輸入)
工賃: 0 JPY

 ちなみに、ATF、ATFオイルパン交換に必要となる工具のうち特筆すべきは、以下の3つです。

トルクレンチ 8N・m
 オイルパンの取付ネジの締め付けトルクは8N・mですので、それに応じたトルクレンチが必要です。最近主流になりつつあるデジタル式の使い勝手がよさそうに思え、私は比較的安価でありながら信頼の藤原産業製 SK11シリーズのこちらを使用しました。十分満足です。
 トルクレンチは1本ですべてのトルク域をカバーするということはなく、メンテナンスの内容に応じて適したトルク域のものを買い足す必要があります。私は、いまのところ3本保有しています。


アングルトルクゲージ
 オイルパンの締付ネジは、8N・mで締めた後、さらに45°だけ締め付け方向に回転させねばなりません。ボルト座面の状態にかかわらず均一な締め付けトルクを得ようとせんとする、いわゆる角度締めです。これは必要なゲージではありますが原理が簡単で、高ければ精度が増すというものでもありません。安いもので十分だと私は思います。


オイルサクションガン
 私は500mlのものを使用しましたが、リンクに示した1000mlのものの方が効率がよいと思いました。オイルをガンに補充しクルマにもぐる、という工程は最小限に留めたいですので。ATFの交換であれば灯油ポンプで代用される方が多いようですが、私は近いうちにデフオイルの交換にも使用したく、この機会にサクションガンを購入しました。


今回は、ここまで。
次の機会にお会いしましょう!

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