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三重県立美術館で、「香りの器」ほかを鑑賞する

博物館・美術館
2020.10 三重県立美術館で開催された香りの器展

 さる図書館で、こんな素敵なポスターを見かけました。

 三重県立美術館 (三重県津市)で、香水瓶を集めた企画展が開催されているようです。本企画の特別協力は、高砂香料株式会社です。

 同社の創立は1920年、今年100周年を迎えた老舗の香料メーカーです。日本国内には200社以上の香料メーカーがあるようですが、上位10社が市場規模 (2000億円/年)の80%を占める、つまり数社の大企業を除きそのほとんどが中小零細企業で占められる業界です。日本にはこのような業界構造は比較的多く存在し、代表的なものに印刷業界、段ボール業界などがあります。国内における香料3大メーカーは、1番手が高砂香料株式会社、2番手が長谷川香料株式会社、3番手が小川工業株式会社です。これら大手が香料そのものの研究開発・製造販売をおこない、中小零細企業は大手から購入した香料を調合し、顧客 (多くは、化粧品、食品、バス・トイレタリーメーカー)の求めに敵う香料製品を調整し販売する、という業界構造になっています。
 なお、香料はフレグランスとフレーバーに大別されますが、前者はいわゆる香水類、バス・トイレタリー分野向け、後者は食品向けで、売り上げのほとんど (正確な数値は忘れてしまいましたが、90%を優に超える)を後者が占めているそうです。

 私は以前仕事で香料に関わったことがあり、その時に上記3大メーカーやスイスに本拠を置くGivaudan (ジボダン)社の日本法人を訪れました。当時の私はビジネスサイドと研究サイドの両面の役割を持っており、このテーマに関しては後者サイドの色が強かったため、これら香料大手メーカーから香料の技術的な話を聞かせてもらうばかりではなく、めったに見ることのない香料会社の研究施設や調合室を見学させていただくという、たいへん貴重な経験をさせていただきました(現代では非常に高価だという、天然のバラの香料を嗅がせていただきましたが、凡人の私にはその価値がよくわかりませんでした・・・)。
 東京蒲田の高砂香料株式会社本社を訪ねた際、展示室に古い香水瓶や香りにまつわる歴史的資料が展示されているのを横目に見て強い興味を持ちましたが、その時は研究室の見学がメインでしたのでほとんど素通りで終わってしまいました。ここに、当時の無念を晴らす機会をようやく得たわけです!

 さて、美術館に入りましょう。

 予想していたよりも、かなり重厚な建物でした。

 展示室に入りましょう。

 まず、本企画展の趣旨が目に入ります。
 本企画展は、高砂香料株式会社が長年にわたり収集してきた香りに関するコレクションの中から、香水瓶、高炉、香合、香道具などを中心に、約230点の名品を選んで展示するものです。
 古代エジプトの香油壺や古代ローマンガラスから、マイセンなどの陶磁器、近代のアール・ヌーヴォー、アール・デコ、さらに現代へと至る西洋の香水瓶に加え、香合、香炉、 香道具といっ た日本における伝統的な香りの器まで、バラエティーに富み多くの優品が含まれる高砂コレクションの一部を展示し、多くの方に香りの文化に触れる機会を提供するものです。

 展示は、異国の香りと日本の香りの2章立てで構成されます。

 第1章 異国の香りでは、古代エジプトの香油壺に始まりガラス器、陶磁器の香水瓶に加えて、香にまつわるカタログ、ポスターが展示されています。今回の香りの器展のポスターも、20世紀初頭のピヴェール社 (フランス)の化粧品総合カタログ (写真下)から着想を得たもののようです。

 今から時を遡ること約2000年、古代オリエントの頃の香油瓶で私の気に入ったのは以下の3点です。

長頸香油瓶 (1~3世紀)
フラスコ型香油瓶 (1~3世紀)
型吹ねじり装飾香油瓶 (4~5世紀)

 写真右の型吹ねじり装飾香油瓶について、非常に綺麗で輝く銀色をしていますが、製作当初は通常のガラスだったそうです。これが2000年の時を経て銀化し、現在の姿になったとのこと。ロマンを感じますね~。なお、銀化はガラス器が土中に埋もれていた場合に起こり得る現象で、ガラス成分の珪酸や酸化アルミなどが土中の鉄、銅、マグネシウム分と化学反応 (塩の形成)によりガラス表面に雲母のような多層の膜が形成されることをいいます。この化学反応の詳細は、以下の文献に記載されています。

ガラス表面における珪酸マグネシウム水和物皮膜の生成 (赤城三郎, 窯業協会史, 84 [2], 1976)

 17世紀に入りアルコールによる精油技術が開発されたことで香水の普及がすすみ、香水文化が一気に花開きます。
 香水の普及とともに、香水瓶の量産も促進されました。19世紀になると、マイセン、ロイヤルコペンハーゲン、ノリタケといった現在も続く著名な陶磁器メーカーが香水瓶を手掛けます。

マイセンの色絵香水瓶
今に至るもウエッジウッド社の代名詞的存在である「ジャスパーウェア」の香水瓶
オールドノリタケと呼ばれる、日本陶器社時代のラスター彩花鳥文様香水瓶

 陶器の一方で、クリスタルの逸品もこの時代に多産します。

バカラがクリスチャン・ディオールのために制作したクリスタルボトル (1957)
マルク・ラリックの香水瓶。
左:「いちずな願い」(ウオルト社)(1944)
右: 「喜びの心」(ニナ・リッチ社)(1942)
写真中、左側のウォルト (Worth)社の香水を宣伝するポスター

 19世紀初頭にフランスの街角を飾った石鹸のポスター。

 

 第2章 日本の香りの展示に移ります。日本の香りの歴史が始まったのは仏教が伝来した6世紀頃、ヨーロッパ諸国に比べてだいぶ遅まきです。しかし、伝来直後から香りの文化は瞬く間に開花し、そのスタートの遅れを感じさせないスピードで独自の発展を遂げます。日本における香りの文化は他国と異なり香を焚く、香を聞くことが中心で、それに供するための豪奢な香道具の逸品が今に遺されています。

鶴蒔絵香枕 (江戸時代)
寝ている間に髪に香を焚きしめる枕
香の組合せをあてる組香の道具
葵紋散蒔絵香割道具箱
徳川、あるいは松平所化に由来する大名道具
七宝花鳥文香炉 (明治時代)
蘭奢侍 (らんじゃたい)
もっとも有名な香木といっても過言ではない逸品。正倉院に蔵された黄熟香を切り取ったもの。足利義政、織田信長、明治天皇など、時の権力者が切り分けたことで知られる。
昭和御大典記念献上香水セット
昭和天皇が即位した際に、献上品として高砂香料が製作した香水。1年12ヶ月用 (12種)の香水が収められている。付属する電熱製の昭和香炉を用いて香りを楽しむ。

 ここまでが、企画展「香りの器」の様子です。

 駆け足で、常設展を観ていきましょう。想像以上に、ステキなコレクションでした。
 常設展では、私の好きなフランス印象派の巨匠のうち、クロード・モネ、マルク・シャガール、オーギュスト・ルノワールの作品が展示されていました。シャガールブルーとも評されるシャガールの特徴的な青を観て、数年前に訪れた聖シュテファン教会 (ドイツ マインツ)に遺された、シャガールの手になるブルーのステンドガラスを想い出しました。息を呑む美しさで、長い時間観ているうちに教会の行事が始まってしまい参りました。当然ドイツ語で何が何だかわからない上に参加者は皆真剣、出るに出られずボンヤリ佇むほかありませんでした。

 なお、三重県立美術館の所蔵するシャガールの画は「枝」と題された下記の作品です。

「枝」 マルク・シャガール (1956)
西洋絵画美術館のサイトより引用
https://artmuseum.jpn.org/index.html

 この日は、特集展示として、「没後十年 榊莫山展」が開催されていました。

 最初「莫山?誰、それ?」でしたが、展示室入口の写真にかすかな記憶が・・・。そう、90年代に宝酒造の焼酎「よかいち」のCMで、「莫山先生のバクザン発言」だとか「よかいち、よかいち、綺麗な味や」で一時期を風靡した、あの莫山先生のことでした。素朴な味わいの書と画に、大満足でした。

 メインの「香りの器」展に加え、常設展、榊莫山展のすべてが期待以上の内容で、たいへんに満足のいく展示でした。

 帰りがけに、こんなパンフレットを見つけました。名古屋の横山美術館で、変わりダネのウイスキーボトルを展示する「-目でも陶酔できる- ウイスキーボトル展」が開催されるようです。時間が許す限り、出かけてみたいと思います。

今回は、ここまで。
次の機会にお会いしましょう!

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