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大阪歴史博物館 (大阪府大阪市) -あやしい絵展を観る-

博物館・美術館
2021年夏に開催された「あやしい絵展」。これは、大阪会場。

 2016年夏に開催された大妖怪展 (こちらの記事で紹介しています)は、その後の私の美術指向に極めて大きな影響を与えました。もともと興味はあったのですが、この展示会で「この世のものでないもの」のへの私の指向が決定付けられました。東京会場(江戸東京博物館)だけでは飽き足らず、大阪会場(あべのハルカス美術館)にも足を運びました。
 このブログでも、地獄絵松井冬子画伯など「この世のものではないもの」に関連した話題を取り扱ってきました。

 ある時、珍しく電車に乗ると、こんなインパクトのあるポスターを目にしました。ひとめで、この世のものではなさそうだな、とわかります(笑)。

 おおお、なかなか面白そうな企画展だな~。大阪歴史博物館か~。永らく訪れていないけど、この博物館はたしか常設展示も面白かったっけかな~。

 それで、出かけることにしました。そうそう、ギャラリースコープ (美術鑑賞用の単眼鏡)を持っていかねば!

 ギャラリースコープで画の一部を拡大、すると現れる、肉眼で鑑賞するのとはちょっと異なる世界にこのところすっかりハマっていた私ですが、家中のどこを探しても見当たりません。

 またやっちまったか・・・。仕方ない・・・・・、もいっこ買うべ・・・・。

 今日の今日に必要なのでネットで購入、というわけにはいかず、道中にヨドバシカメラ梅田店に寄りました。とはいえ全く同じものを買いなおすのはさすがに悲しいので、前回のKenko社品に代わり今回はVixen社品を購入しました。こちらに経緯を示しましたが、美術展に博識な店員さんとの会話が楽しく、いい買い物ができました。この手のものを対面販売で買ったの、どのくらいぶりかな・・・。

 さて、こちらが大阪歴史博物館です。写真左は館内から北に向けて撮影したものですが、これからわかる通り、大阪城のすぐ南に位置しています。

 江戸幕府による鎖国が解けたのち、これまでの日本になかったものが続々と西洋諸国から持ち込まれました。そのひとつが、退廃的、妖艶、グロテクス、エロティックという「表現」の手法です。このこれまでにない表現は美術界の一部からの批判にさらされたものの、文学等をバックグラウンドとして大衆にひろがりました。この「あやしい絵展」では、幕末から昭和初期にかけて制作された絵画、版画、雑誌や書籍の挿図等からこうした表現を集め、展示したものです。

 印象に残った作品を、いくつか紹介します。
 (画像はすべて、本展示会のホームページから拝借しました)

・安珍と清姫 (橘小夢)
 イケメン坊主の安珍が一夜の宿を借りた家の娘の清姫に見初められます。帰りも寄るように迫られた安珍はその要望を受け入れましたが、約束は果たされませんでした。怒り狂った清姫は蛇に姿を変え安珍をある寺に追い詰めます。安珍は寺の鐘の中に身を隠しますが遂に見つかり、蛇に姿を変えた清姫に巻き付かれたまま火で焼かれてしまいました。鐘の中で焼き殺される様子を示したのが本作品です。安珍、たしかにイケメンに描かれていますね。この画は、単眼鏡で拡大すると違う一面を見せます。

・淀君 (北野恒富)
 本展覧会、大阪会場のポスターにもなっている作品です。怖いというかグロいというか、なんともいえぬ後味の悪さを残します。かなり大柄な作品でした。この画は、拡大しても新たな世界は現れませんでした。肉眼で楽しみましょう。

・道行 (北野恒富)
 近松門左衛門の戯曲「心中天網島」を題材としたものです。恋の成就が叶わぬと知り、死に向かうふたり。男女ともに、すでに目がうつろです。添えられたカラスが、この先の不吉な出来事を予言しています。二人の目元辺りを拡大すると、背筋がかなり涼しくなりました。カラスの目の表情も、秀逸です。

・花がたみ (上村松園)
 「花筐(はながたみ)」とは世阿弥作とされる能の一曲で、室町時代を舞台にしたもの。松園はこの作品で「高貴な女性の狂気」を表現したといわれます。身なりは高貴そのものなれど、心ここに非ずのうつろな表情。この表情を獲得するために松園は幾度となく精神病院に通い患者の観察を行ったそうです (コンプライアンスに厳しい昨今では、アウトな行為かもしれません)が、最終的には憑き物の憑依した状態の、イタコのような職業の方から着想を得たようです。これも、拡大することで新たな表情を見せる一枚でした。

 今回の企画展 (大阪会場)のポスターは、以下です。展示作品リストを、こちらに示します。

 上記作品で相応の満足感は得られたものの、本当に見たかったのは東京会場で展示された焔 (上村松園)と、大阪会場で後期に展示予定の地獄極楽図 (河鍋暁斎)です。前者は京都市京セラ美術館の開館1周年記念展 (2021年7月17日-2021年9月12日) で展示されているようです。この作品、過去に数回観た記憶がありますが、そのうちの1回は冒頭で紹介した大妖怪展だったと記憶しています。

 さて、企画展を観終わり、常設展に移ります。

 大阪歴史博物館の最大の特色は、この建物の東の眼下に見える難波宮の展示でしょう。

 この難波宮、大阪市立大学文学部教授だった (考古学を文学部の傘下に置く大学は多いようです)山根徳太郎博士が退官後に執念を注いで発掘を遂げた遺跡だそうです。難波宮消滅ののち数百年後、すぐ北側にあの豊臣秀吉が大阪城を築城するわけですが、彼はこのかつての都の存在を知っていたのでしょうか?

 歴史博物館はどこも同じような構成で、その地の原始時代に始まり中世、近世、現代へと展示物が移り変わるのですが、私は現代の初期の段階、具体的には昭和の初め頃の、ごくごくおぼろげながら知っている時代の展示が割と好きです。知っているといってもその時代を生きたということではなく、その時代の遺物について子供の頃に実際に見聞きしたことがある、というレベル感なのですが・・・。戦時中の暮らしや、その後の高度成長期の展示物などなど。

 そうそう、私は面白い図柄の絵馬札を集めるのが好きなのですが、大阪の四天王寺にこんなステキな絵馬札があることを、ここでの展示で知りました! (写真、撮らなかった・・・)

 乳のおんばさんとして知られる、乳布袋尊の絵馬だそうです。

 じゃ~ん!!

 なんとも、シュール!これは、なんとしてもゲットしに四天王寺に行かねば!!
 (この写真は、宿坊研究会様のホームページから転用させていただきました。)

 ちなみに、この「シュール」という言葉は身をもってした経験を通じて感覚としてしっかりと理解できていますが、あやしい絵展の解説書で何十年ぶりかに目にした「退廃的」という言葉、これは高校時代に英語のdecadanceと共に憶えはしたのですが、未だに意味を理解できていない気がします。現代、少なくとも40代以前の世代にとっては、この「退廃的」という言葉はもう死んでしまったものなのかもしれません。ただし、言葉は死んだり蘇ったりを繰り返しますので、10代や20代の世代には案外と「ナウい」(は、はずかしい・・・)言葉として蘇っているのかもしれません。
(20代の娘 (←あんま勉強しなかったタイプ(笑))に聞くと、「なにそれ~?。知らない。」と、にべもありませんでしたが・・・)

 

今回は、ここまで。
次の機会にお会いしましょう!

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